時計修理

40年程前、いざなぎ景気が終わって間もなくの頃だった。
本家の居間にあった明治時代製作の高さ2mもある振り子時計を修理に出した事がある。
その時計は大きさもさる事ながら重さも大概だった。
正確な重さは解らないが大人3人でやっとこさ運べる程の重さであったと記憶している。
当時、町に一軒は必ず時計修理職人がおり、
腕時計から懐中時計に壁掛けに置時計と年がら年中忙しそうにしていたのを覚えている。

 

そんな中、大物を修理に出したものだから先方は大変だったにちがいない。
修理が完了したのは出してから約3ヶ月後。物が物だけに当時としては決して遅かった訳ではない。
また、直してくれたのは内部機械の駆動部分だけでは無く、
頼んでもいないのに外観の小さなキズやヒビ割れ等、目を凝らして探しても解らない程に綺麗に仕上げてくれていた。
その分、時間が掛ったのだろう。
その時、まだ健在だった祖父が目を細めてこう言ったのを今でも鮮明に覚えている。

 

「直すってのは壊れた処だけ修理する事を言うんじゃ無い。
壊れそうな処や誰も気が付かない疲れた部分を見つけてやって調子を良くしてやる。
それが直すって事だ」続けてこう言った。
「それが出来るのが本物の職人だ」
その一言が、間もなく還暦を迎える私の人生の指針になっている。